そしてその背後に、プロデューサーの髙橋さんや森重さん、現場で汗を流していたスタッフやキャストのみなさん、そして宣伝担当の筒井さんたちの顔が浮かび、なんだか朝っぱらから感極まりそうになる。
実際、この映画の撮影現場を見学に行った際、その目にやはり狂いがなかったことを知る。真夏の撮影現場というのは、殺気立っている。そんな男たちの中で、首にタオルを巻き、額を流れる汗も気にせず、現場監督然とした髙橋さんが立っていたのだ。
映画『さよなら渓谷』は、この年のモスクワ映画祭コンペティション部門に唯一の日本映画として出品されており、なんとそこで、グランプリ作品に次ぐ「審査員特別賞」という栄えある栄誉を勝ち取った。