毎日新聞連載小説
津島佑子 作
井筒啓之 画
2009年7月8日
「信号が青になるのを待ってから、ふたりは並んで横断歩道を渡った。
校舎の表側には近づかず、そのまま、空き地のわきにある隙間に向かった。
時間が経つにつれ、空き地に差しこむ斜めの光は強くなっている。
乾ききった枯れ草が金色にひかる。その空き地に添って、
予想通り、細い道が奥につながっていた。
ここかな。でも、ちがう気もする。なんにも、見おぼえがない……。
路地の前にたたずんで、昭子は困惑した声を出した。」
僕が仕事場にしているマンションは僕が通っていた
小学校のすぐそばにある。
だから子供の頃に通った道と同じ道を歩いて
仕事場に来ているのだ。
僕にとっては昔のままのこの街なんだけど
実際は大きなマンションが立ち並んでいるし
住宅もきれいな家が並んでいる。
逆に住み慣れているから街の変化に気づいてないんだろうね。